モラトリアムる悪癖 〜 椎名林檎「無罪モラトリアム」より |
モラトリアムという言葉をご存知でしょうか。 辞書がてもとにないので、正確な意味かどうかわかりませんが「(社会にでるまでの)猶予期間」といった感じで僕は捉えています。 学生時代なんかがその代表でしょう。なにがしかを成し遂げないでもよい期間のことです。 準備期間というか吸収中というか、まだ始まってない時期というかそんな感じです。 困ったことに僕は、学生時代も何年も前のこととなったいまでさえ、モラトリアム気分にどっぷりなのです。 いつか本番の人生がはじまってからやろう、みたいな感じで本当にやりたいこと、やるべきこと、でも面倒くさいこと(自分の価値が真に問われることになるから)を先送りに、さきのばしにしてしまう悪癖がしみついています。 もういい年なんだし、人生はいつでも本番で、いまという時間は二度と来ないってことをもっと心の底からわかってもらわないとこまる時期にきてると思うんですが。 HPの更新ひとつとってもそうです。やりたいこと、やるべきことはみえているんですが、モラトリアムってしまうのです。やってみてしょうもない結果に終わるのが怖いんですね。 頭の中のすばらしい構想で妄想するほうがはるかにラクで楽しいですし。 「無罪モラトリアム」といえば椎名林檎のファーストアルバムですが、このタイトルって本当に感動的だなあと、いましみじみ思います。 林檎にとってモラトリアムってのは基本的に有罪なわけです。今、この時を100%享受するためにはモラトリアムってる暇などないのです。彼女が感じていた、今を100%生きる焦燥感みたいなものは、歌詞や、当時のインタビューからうかがい知ることができます。 たとえば16歳のときに作ったという「ギブス」では写真をいやがってます。その理由は「写真になっちゃえば私が古くなる」、つまり、今この瞬間を楽しまないで、未来にみるであろう写真に時間を割くのは嫌、ということです。 繰り返し用いられてる盛者必衰のイメージ(歌舞伎町の女王、積み木崩しなど)からも、そういった充実した生への焦りを強く感じます。何にもしない間に人生が終わってしまったら大変ですもんね。 そんな林檎が「無罪モラトリアム」を宣言したということは、いままでの人生(モラトリアム)が無駄じゃなかったと宣言したということです。「私は成し遂げた!」と宣言したってことです。 「金字塔」とか「大傑作」とかいったニュアンスもある、開放感溢れた自信満々のタイトルなわけです。 自分にも林檎の何分の一かでいいから焦燥感があったらな、とおもいます。自分に一番欠落してるのはたぶんそれだからです。まあ、あんまりありすぎてもイライラがつのって大変そうですけどね。 関連レビュー 椎名林檎「無罪モラトリアム」 |
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