エレファントカシマシ 「扉」 | |
★★★★★ 2004.3.30 release |
「ベストアルバム」 エレファントカシマシ15枚目のオリジナルアルバムです。 ついにやってくれたと言うほかないです。まさに傑作。 エレカシというバンドは、他に類を見ないほどにバンドのイメージを変化させてきたバンドです。 怒りの時期、悟り済ました時期、一転ポップな曲で売れようとした時期。エレカシをまったく知らない人が「生活」と「愛と夢」とを聴き比べれば、とても同じバンドとは思わないでしょう。 これは、バンドの中心である宮本浩次が、常に自分たちのポジションに違和感をおぼえ、もがいてきた結果だと思います。エレカシは決して孤高のバンドなどではなく、宮本浩次は、その豪快なイメージとは裏腹に、しょうもない事に思い悩む、つまり僕らと同じような人間だということです。彼が特別なのは、その思い悩みっぷりが尋常ではないという一点に尽きると思います。 「扉」というタイトルの、このアルバム。ここには、思い悩んで紆余曲折をつづけた宮本の、すべての表情が収められています。怒り、悲しみ、そして喜びと優しさ。「24人のビリー・ミリガン」で、すべての人格を統合した人格「教師」が出現した時のような感動。 あらゆる時期のエレファントカシマシに繋がっている、こんなアルバムをファンは待っていたと思います。 ’04/05/27(トモヤ) |
Mr.children 「シフクノオト」 | |
★★★ ’04/04/07 release |
「メガヒットバンドの凄み」 いわずと知れたメガヒットバンド、ミスターチルドレンの11作目となるアルバム。 ミスチルといえば、そのメロディの良さや、桜井の声の良さに惹かれるものはあってもあえて自分が聴く必然性を感じてませんでした。歌詞的に惹かれることがなかったからですかね。 でも、以前に人の付き添いで行った甲子園球場でのコンサートでは、思わぬ感動を受けました。そのコンサートの最後に、唯一の新曲として演奏された「優しい歌」という曲が、いままでの珠玉の名曲群よりもさらに増して輝く名曲だったからです。「あれだけの名曲を作り出してきて、さらに新曲が一番いいなんて!」と非常にわくわくする楽しい気持ちを味わせていただきました。 その「優しい歌」を含んだ前作「ワンダフルワールド」は、個人的にはじめてミスチルとのシンクロを感じた傑作でした。「蘇生」「youthful days」と名曲多数です。 で、今作「シフクノオト」。最近のシングルにはあまり感じるものがなかったので、たいした期待もしてなかったのですが、、。 初回盤に付属しているドキュメンタリーDVDにやられました。 ジャケットを開いた左側、つまり二枚組アルバムでいうと、DISC1の位置にDVDがセットされています。自分はパソコンに入れたので、いきなりDVDが始まってびっくりしました。これはバンドからの「まずDVDみてね」というメッセージでしょう。 レコーディングをドキュメントした25分間のDVD。これが大変興味深いのです。 まず、冒頭の桜井の熱唱。レコーディングにかけるミュージシャンの思い、というものが痛烈に伝わってきます。本気です。彼は本当に音楽に本気なのです。 レコーディング風景がみられる、というのは嬉しいものです。使っている機材も垣間見ることができるし。 さらに、プロデューサー小林武史とミスチルのプロデュースされ具合、が鮮烈に浮かび上がっていることも指摘しておきたいところです。メンバー間の関係も読み取れます。中心人物桜井、ムードメーカーJEN、自分の作業を職人的にこなす残りの二人。 コンスタントに何百万枚売るミュージシャンのレコーディングにおける、細かい部分のシビアさ。一つの音に対する思いの濃さ。 プロミュージシャンを目指すアマチュアの人たちに、好き嫌いは別として是非みて貰いたいと思いました。 ’04.04.12(アトム) |
ピーズ「アンチグライダー」 | |
★★★★ 2004.03.03 release |
「転がる石に苔がむす」 前作アルバム「Theピーズ」のラストに配置された#12「グライダー」。 「10年前も10年先も/同じ青な空を行くよ/スローモーションが浮かんで行くよ/もうずっとグライダー yeah ボクはグライダー」 風に乗って、動力無しでどこまでも漂っていくグライダーに、自分を重ね合わせた曲です。 この曲は、ファンの間でとくに絶賛されました。個人的にも大好きな一曲です。 アルバム「Theピーズ」では、「ボクらは未来へズれていく」(#4「サイナラ」)といったフレーズが表すように、「まわりの時間が過ぎていった結果、自分はいつの間にかこんな所に来てしまった」という感情が目立ちます。 グライダーのように風に流されていたら、見える景色は昔と違っていた。それを、そのまんまさらけ出したアルバムでした。 しかし、ニューアルバムのタイトルは「アンチグライダー」 #1「バーゲン」では、 「ザーメン満載グライダー 下界へ急降下」 #2「ギア」では、 「ツナげ ニュートラルばかりで 芸がねぇ/不細工でも 不器用でも 動かすまで」 「ウタえ 風向き任せの ヒコーキじじい/物置きからエンジン出せ アンチグライダー」 …もう、完全に否定してます(笑)。はるにしてみたら「あの程度の曲ホメてんじゃねえ」ってとこでしょうか。 自分で持ち上げといて自分で叩き落す、ピーズの得意ワザと言ってしまえばそれまでですが、これらのフレーズは、アルバム「アンチグライダー」を象徴する言葉でもあります。 前作が「周りが動いていった」結果「見えてきた」ものを歌ったアルバムだとしたら、今作は「自分が動く」ことによって「見えた」ものを表現したアルバムだと思います。 風任せに漂うことをやめ、ゆっくりでも確実に地べたを転がることを選択したように思えます。 転がることによって研ぎ澄まされてゆくのではなく、むしろ地面に生えてるコケまで巻き込んでいくような感覚。 前作はわずかながらも「売れるんじゃないか」と思わせる一般性をもっていましたが、今作は素直に「売れることはないだろう」という感想です。 音もメロディも歌詞も、より剥き出しで、痛々しいものになっているからです。 しかしそのぶん、全体に漂う凄みは、前作をはるかに凌いでいます。 ’04/03/12(トモヤ) |
ウルフルズ「ええねん」 | |
★★★★ 2003.12.10 release |
「ええねん!」 ベーシスト、ジョン・B・チョッパーの復帰作。 トータスをはじめとしたメンバーの喜ぶ顔が目に浮かぶ快作です。 ここ数作、かつての勢いを取り戻しつつあったウルフルズに、絶妙のタイミングで最後のワンピースがはまったという感じでしょうか。 アホな曲も、ばっちりキメる曲も、切ない曲も、きっちりバットを振り切っています。 なかでもやっぱり#1「ええねん」はひさびさのホームランでしょう! これはウルフルズにしか歌えない。ずっと大阪弁にこだわってきた彼らが、ついにいちばんシンプルな大阪弁に辿りついたという感動すらおぼえる曲です。 あと、このアルバムは2枚組になっており、2枚目にはジョンBソングが2曲収録されています。1曲目「Sleep John B」には、なんと奥田民生、YO-KING、ピーズはる、スピッツ草野など多数のゲストが参加。ジョンBを暖かく迎える、これまた感動的な内容になっています。 もし俺がジョンBで、いきなりこの曲聴かされたら泣くね。泣き崩れるね。 ’04/03/11(トモヤ) |
ソフテロ「よろしうら+singles&more」 | |
★★★★★ 03.12.12 release |
「久々に出会ってしまった」 愛知県在住の石川了輔によるひとりバンド、ソフテロ。1stアルバムは新作「よろしうら」とシングルやレア曲を集めた2イン1。いきなりベスト盤といった様相を呈しております。 CD屋の店頭で聴いて動きが止まってしまいました。1曲、2曲と聴き進んでいくうちに予感が確信に変っていく。これはイイ! みつけたよ!久々に! 歌詞がすごく良いのです。一回聴いただけで言葉がまっすぐに突き刺さってくるなんて、なかなかないです。個人的なつぶやきに普遍的な力が宿るそのパワーは、ジョンレノンや、椎名林檎級(?)のものがあります。 また、音楽的にもすごい。ゆらゆら帝国×サニーデイ・サービス÷ファンクってかんじでしょうか。メロディ、構成ともに申し分ない。確実に音楽的な体力が備わっている感じです。ぱっと聴き音痴っぽく聴こえた声も、ブルーノートの達人の成せる技って感じです。 つまり、両輪がみごとに駆動しているめったにいない本物なのです。 例えば#7「サブレ」。兄の結婚式の日のことを歌った感動的な曲なんですけど、この脳内ぶちまけっぷりったらすごいものがあります。 フロに入ったり、冷蔵庫で腐っている牛乳や、カルシウム不足や、健康や、ごみの出し方を心配しつつ、兄の花嫁がお酒を飲めることをうらやんでみたり(彼はどうやら下戸みたいです)する。おみやげの牛乳サブレをたべる。それでいて、結婚式での兄を「ハードロックから/ギターまで教えてくれて/今度の結婚式じゃ/永遠の愛を/手に入れた男の笑顔をみせてくれた」と表現する。 これが感動的なメロディとともに奏でられるのです。さらにそんな自分を「僕は天使だった」と言い、「錯覚だったか」と、落とすことも忘れない。 1曲のこの情報量の濃さ。 個人的状況を聴き手に体験させてしまう表現力。 関係ない自分まで兄の結婚式での姿に感動してしまったよ。 そのさらけだされた脳内の言葉が、基本的に快の方向なのがとてもいいのです。 絶対イイヤツだよ。この人。 百万枚売れることはないでしょうけど、確実にこれからも自分を楽しませてくれるであろう存在です。末永い活動を期待します。 ’04/03/09(アトム) |
スピッツ「惑星のかけら」 | |
★★★★ 1992.9.26 release |
「イントロでノックアウト」 #1「惑星のかけら」のイントロがかっこいい。CDを再生するといきなり「あれ?スピッツいれたはずだけど」と思うほどの激しいギターリフが響きます。 昔よく、アトム君が僕の部屋に遊びにきてたときこれをかけると、そのたびに「お。かっこいい。コレ誰?」と言っていたものです。いいかげん覚えろよって言いたくなるくらい、ほんとに毎回言ってました。 彼らのルーツがハードロックだという意外なエピソードも納得できるイントロです。 (ちなみに、ライブビデオ「JAMBOLEE 1」では、このイントロ部分の照明がまたかっこいい。鳥肌ものです) サウンドにあわせて(もちろん全編ハードロック調というわけではありませんが。スピッツにしては、ということです)、草野マサムネの歌詞も、より力強いものになっています。 彼の中のドロドロした、変態的とも言える部分もあちこちでぶっちゃけてしまっています。 なんだか、聴いていて、「ああ、好きなようにやりたい事をやってるなあ」という印象をうけます。すごくまっとうに自らを表現した、気持ちのいいアルバムです。 しかし、セールスは芳しくなかった。 後のインタビューによると、マサムネはかなりショックをうけたようです。 この反動が、次作、ホーン使いまくりのポップ全開アルバム「Crispy!」ににじみ出ています。 個人的には、ジャケットも売れなかった原因のひとつではないかと…。 上半身裸の子供が、原っぱで弓をかまえています。間違ってもジャケ買いはしないだろうな、と思わせる雰囲気をもったジャケットです。 '04/03/08(トモヤ) |
Going Under Ground 「かよわきエナジー」 | |
★★★★ 2001.10.24 |
「青春の出発点」 ゴーイングアンダーグラウンドのメジャーデビューアルバム。 青春というものにくっついてくるセンチメンタリズムを、疾走感のあるビートに乗せて歌うバンドです。 曲そのものはとてもいい。アレンジもきちんと練られていて、演奏もしっかりしています。 しかし、「ゴーイングアンダーグラウンド」というバンド名と、「かよわきエナジー」というアルバムタイトル。 正統派ポップバンドのたたずまいに反して、ことさらに自らを卑下するような言葉を持ってくる。 もったいない事だと思いました。 歌詞を聴くと、「かよわきエナジー」というタイトルにふさわしい、はかなげな言葉が並んでいます。 形式としては、「僕」と「君」を中心とした曲が大半を占めます。 一見ラブソングのようですが、そこから受ける印象は「幼馴染の友人同士の友情」です。 アルバム全体に漂っているのは「郷愁」のイメージ。彼らが社会に放り出されて最初に感じる感情が閉じ込められたアルバムのような気がします。 「くずれそうで しがみついて/その手に未来が宿り/ここに君もいればいいなあ/かすかな思い出だけ」(#5「凛」) しかし彼らは、ただ過去に固執しているだけのバンドではありません。 未来に対して闘うことを放棄していない。 #5「凛」では、こう歌ってもいます。 「その10メートル先を抱きしめたいだけ/ただ10メートル先を…」 このアルバムにおいての彼らは、自分というものを過小評価する青年そのものです。 だけど彼らは、そんな自分を精一杯信じようともしています。 それが確信に変わったとき、という期待を存分に持たせてくれるファーストアルバムでした。 ’04/03/07(トモヤ) |
少年ナイフ 「Candy Rock 」 | |
★★★ 2003.5.22 release |
「若さあふれるパンクポップバンド登場!」 少年ナイフの原点に回帰したような作品です。 美智枝さんの脱退以降、ディスコサウンドやテクノを取りいれてきましたが、今作ではふたたび勢いのあるギターロックにこだわっています。演奏はほとんど山野姉妹がふたりで担当し、使用楽器はギター、ベース、ドラムのみ。 少年ナイフの活動は、予測・理解ともに不能です。アルバムごとのコンセプトは、世の流行などにはまったく関係なく決められているようです。要は、ソングライターである直子さんの気分次第。彼女のマイブームがアルバムの性格を決定します。リスナーは、それを無条件に受け入れるしかありません。しかしそれは決して不快なことではありません。むしろ、アルバムがリリースされるたびに、こんどはどんな色なのだろうか、とワクワクします。 アルバムごとのコンセプトなどと書きましたが、それすら、カッチリ決まっているアルバム(コンセプトが貫かれているもの)、ごちゃ混ぜの多様感に富んだアルバム(なんでもアリ。ルール無し)というふうに、気まぐれに変化します。リスナーはヘタに構えることなくただ楽しみに待てばいいのです。 「Candy Rock」は、楽器の構成からもわかるとおり、シンプルなロックをコンセプトとした作品だと思います。 メロディーもアレンジも、シンプルにまとめられています。感触としては、01年のシングル「オレンジの太陽」に近いです。 お気に入りはMC「セイウチ」。歌い出しが「セイウチの歌が出来たよ聴いておくれよ」。 それは、歌い出す前に言うべき事なのでは…。 歌い出しでこんな事言われたら聴かないわけにはいきません。 一般のミュージシャンがシンプルなロックアルバムを作ったとしたら、そこに乗る歌詞はやはり「剥き出しの肉声」でしょう。「すべての修飾を取り払った裸の言葉たち」というやつでしょう。 ナイフはそういう常識とは無縁です。ある意味剥き出しの言葉ではあるわけですが、それは「無邪気」という意味において、です。 でもたぶん直子さんは、無邪気なものの力を自覚しています。子供がふと放つ、核心を突く言葉。無知ゆえに辿り着く真実。「王様は裸だ」ってやつです。 少年ナイフを聴くということは、直子さんという人間を聴くということです。ハズレもあるけど、当たりはでかい。 だからこの作品は★★★でも、少年ナイフは常に★★★★★なのです。 '04/03/06(トモヤ) |
椎名林檎 「無罪モラトリアム」 | |
★★★★★ 1999.02.24 release |
「完璧な初期衝動」 椎名林檎、衝撃のデビューアルバム。 当時、先行シングル「ここでキスして。」で気になった僕は、アルバムの曲名を調べてみました。 「正しい街」、「丸の内サディスティック」、「同じ夜」。 どこか破綻している言葉の羅列に、逆に期待が膨らみました。 このアルバムには、椎名林檎の10代当時の瑞々しい感覚が表現されています。 そういったアルバムは得てして青臭く、稚拙であることと引き換えに勢いを表現したものが大半です。しかしこのアルバムは(プロデューサー亀田誠二氏の力も大きいと思いますが)、稚拙などという言葉とはほど遠く、それでいて勢いを失っていない、奇跡のようなデビューアルバムです。 緻密に練られながらも初期衝動を保っている楽曲に、独特の透明感を持ちながらも激しい情念を宿す椎名林檎のボーカルが乗る。破綻した言葉もこの音、この声で歌われると、説得力を持ってきこえてきます。 この後のシンメトリーにこだわったアルバムの完璧さよりも、「完璧ながら雑多」という美しさを持ったこのアルバムが、僕は好きです。 ’04/03/09(トモヤ) |
「関係を強いる強姦魔」 椎名林檎の魅力。それは聴くものを有無をいわさず引き込むパワーにある、と思います。 元来、自分は女性アーティストの作品をあまり熱心に聴くほうではありませんでした。というのも、あんまり自分と関係があると思えなかったからです。 男性アーティストの方が断然感情移入できたからです。 しかし、ですよ。 椎名林檎は、有無を言わさず自分を引っ張り込んだのでした。 その感情のリアリティ、表現力。言葉の選び方。まさに天才の為せる技。 とくにこのファーストは、後の活動と比べて歌謡曲然とした、聴きやすいまとまった曲が集まっていて普遍的な輝きを感じます。 一曲目の「正しい街」のイントロを聴くだけでいつも鳥肌がたちます。 ドラムのコンプのかかり具合とかも最高です。 ’04.06.05(アトム) |
O.P.KING 「O.P.KING」 (CD) | |
★★★ 2003/07/30 reliese |
「ボーカリストのステキな競演」 YO−KING,奥田民生、ピーズのはる、ピロウズのしんちゃんによる夢のユニット。 なんといってもこのバンドの目玉はそれぞれの活動ではメインヴォーカルをとってる人たちが一堂に会したということでしょう。 テーマはロックンロール。オリジナル5曲、カバー3曲の全8曲。 バンドブームの頃からそれぞれを追いかけてきたファンにとっては感慨深いものがあります。 個人的ベストトラックはYO−KINGヴォーカルの「RIP IT UP〜Ready Teddy』。 高音のパートがスリルあって気持ちいいです。 トラベリングウィルベリーズ(ボブ・ディラン、ロイ・オービソン、ジョージ・ハリソンなどのユニット)みたいにもう一作くらいは作って欲しいな。あとコーラスにもっと力いれてくれたらいいのにな、なんて思いました。 これからは日本でも洋楽勢のようにこういったユニットが増えていくかもしれませんね。楽しみです。 (アトム) |
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