The ピーズ
Theピーズ 「とどめをハデにくれ」 | |
★★★★☆ ’93.7.21 release |
「痛いと感じるものを探した」 ★★★★★ 個人的に一番ピーズにはまった時期のアルバムです。何回聴いたかわからないほど。四畳半、真夏、クーラーなし。男むさい部屋。強烈な臭いがします。 ピーズ史上最も長い曲が多いアルバムで、1曲目から8分12秒、2曲目7分22秒と続きます。 長いですよね。「プログレか」というほどです。 普通アルバムは、はじめは軽快でわかりやすいポップ・チューンを持ってくるのが常套手段なわけですが、このアルバムはいきなりメガトン級のパンチを食らわされます。 薄めて薄めて長くなっているわけならわかるのですが、とにかく楽曲の密度が濃いのです。一曲の詞の情報量もハンパじゃありません。歌詞には繰り返しがほとんどありません。 それだけはるが充実して、言いたいことがあった時期だったのでしょう。 現に「リハビリ中断」時のインタビューではるは、この「とどめをハデにくれ」の時のデモテープを聴きなおして「かなわないな」と思ったほどらしいです。 この深さ。うまくいかない自暴自棄な、くすぶった青年像。 青年の苦悩の表現者の代表といえば太宰治ですが、その域にまで余裕で達していると思います。とりあえずはると太宰いっとけば、この手の無駄な作品は絶滅するような気がします。究極。金字塔だと思うのです。 そして、メンバーもそのはるの世界を全力で表現してます。あびさんのギターの冴えわたってること!曲が長いから1曲で二回ギターソロとかがあるわけですが、全く違う表情を鬼気迫るテンションで弾き分けたり、そのプレイアビリティの凄さには恐れ入ります。 素人ドラムだったウガンダも成長をみせ、このアルバムはかっこいい歌うドラミングが聴けます。というか、このアルバムがこんなにダラダラしたミドルチューンであふれているのは、ウガンダのドラムでできる最高の表現を追及したからともいえるわけで、彼がこのアルバムを引き出したとも言えるかもしれないほどです。 ’04.12.02(アトム) 日本語ロック ★★★★ 中古屋で買ってひさしぶりに聴いたアルバムですけど、やっぱいいです、ピーズ。 時期的には1993年、日本ロック冬の時代。ピーズとしては5枚目のアルバム(1stは2枚同時発売なので、このアルバムは4thアルバムという位置付け)です。勢い重視のバカっぽい歌詞から、徐々に文学的とさえ言われる歌詞へと変わりつつある時期です(しかしバカっぽさも残しつつ)。 匂いまで立ち上るかのようなヘビーなミドルチューンの#1「映画(ゴム焼き)」、珠玉のラブソング#3「日が暮れても彼女と歩いてた」、日本版酔いどれロックの頂点#8「日本酒を飲んでいる」、そして、閉塞感がひとまわりして逆に陽性のメッセージを感じさせてしまう#9「シニタイヤツハシネ〜born to die」・・・等々、ピーズ史上に残る名曲の数々。 「日本語はロックのリズムに乗らない」なんて言ってる人に聴いてもらいたいアルバムです。日本語どころか、千葉弁が乗ってるよ、しっかりと。要はリアリティの問題なんだと思います。どんな言葉だろうが、リスナーの頭のなかにひとつの風景を喚起させられれば勝ちだ。ピーズは、それができるバンドなんです。スカスカの音と煤けた声で、まさにスカスカで煤けた世界を描ききっています。 ’04.11.21(トモヤ) |
ピーズ「アンチグライダー」 | |
★★★★ 2004.03.03 release |
「転がる石に苔がむす」 前作アルバム「Theピーズ」のラストに配置された#12「グライダー」。 「10年前も10年先も/同じ青な空を行くよ/スローモーションが浮かんで行くよ/もうずっとグライダー yeah ボクはグライダー」 風に乗って、動力無しでどこまでも漂っていくグライダーに、自分を重ね合わせた曲です。 この曲は、ファンの間でとくに絶賛されました。個人的にも大好きな一曲です。 アルバム「Theピーズ」では、「ボクらは未来へズれていく」(#4「サイナラ」)といったフレーズが表すように、「まわりの時間が過ぎていった結果、自分はいつの間にかこんな所に来てしまった」という感情が目立ちます。 グライダーのように風に流されていたら、見える景色は昔と違っていた。それを、そのまんまさらけ出したアルバムでした。 しかし、ニューアルバムのタイトルは「アンチグライダー」 #1「バーゲン」では、 「ザーメン満載グライダー 下界へ急降下」 #2「ギア」では、 「ツナげ ニュートラルばかりで 芸がねぇ/不細工でも 不器用でも 動かすまで」 「ウタえ 風向き任せの ヒコーキじじい/物置きからエンジン出せ アンチグライダー」 …もう、完全に否定してます(笑)。はるにしてみたら「あの程度の曲ホメてんじゃねえ」ってとこでしょうか。 自分で持ち上げといて自分で叩き落す、ピーズの得意ワザと言ってしまえばそれまでですが、これらのフレーズは、アルバム「アンチグライダー」を象徴する言葉でもあります。 前作が「周りが動いていった」結果「見えてきた」ものを歌ったアルバムだとしたら、今作は「自分が動く」ことによって「見えた」ものを表現したアルバムだと思います。 風任せに漂うことをやめ、ゆっくりでも確実に地べたを転がることを選択したように思えます。 転がることによって研ぎ澄まされてゆくのではなく、むしろ地面に生えてるコケまで巻き込んでいくような感覚。 前作はわずかながらも「売れるんじゃないか」と思わせる一般性をもっていましたが、今作は素直に「売れることはないだろう」という感想です。 音もメロディも歌詞も、より剥き出しで、痛々しいものになっているからです。 しかしそのぶん、全体に漂う凄みは、前作をはるかに凌いでいます。 ’04/03/12(トモヤ) |
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